読書は講談社少年少女世界文学全集から始まった
母の実家が本屋だったせいもあり子供の頃から本の匂いには馴染んでいました。昔の本屋は文房具も扱っていたので本と文房具の匂いですね。
今でも本屋に行くと小さかった頃に一瞬タイムスリップします。
小学三年生の頃のある日、家に大量の荷物が届きました。今のように毎日宅急便が配送される遥か以前、家に荷物が届くことなど年に数回しかなかった頃です。
何だろうと興味津々で見ていると、箱の中から出てきたのは小学校の図書館に匹敵するくらいの大量の本。そしてそれを収納する本棚。
そこには講談社少年少女世界文学全集とありました。全50巻。これを全部読めというのか。そんな無茶な。ありえない。
その本の存在は、その日から何年にも渡って私の大きな重荷となったのです。父親の仕事で何度も転勤しましたが、どこに行っても私の部屋にはその少年少女世界文学全集全50巻がありました。
さあ読めと言わんばかりに。両親のどちらかが本に思い入れがあったのでしょう。それが子供にとってどれほどのプレッシャーだったか。今考えると親にしては大きな買い物だったと思います。
ハードカバーの分厚いずっしりと重い本が50冊。横目で見るたびに心が重くなり、夏休みの宿題のようにそのうち読もうと先送りを続けていました。
両親からは年中読め読めと言われていましたし、自分でも読もうとは思っていたのですが、読めと言われて読むのも嫌でした。
それが中学一年生ごろまで続いたと思います。その頃には既に両親も諦めて何も言わなくなっていました。
読書はある日突然始まりました。何がきっかっけかは全く覚えていませんが、突然一冊を手に取り読み始めたのです。
それが私の読書の始まりです。アメリア編、ドイツ編、イギリス編、中国編、当然日本編もありましたが、一年で全部読みました。
毎日勉強もせずに。本だけ読んでいました。そうすると親は、本ばかり読んでないで勉強しなさいと言い始めます。
今度はそれを無視して本を読み続けたのです。本の題名は全部覚えています。何年も常にその背表紙を見続けていましたから。
講談社 少年少女世界文学全集。純粋に面白くワクワクしながら没頭しました。子供向けの文学全集なので知識や教養が身に付く内容ではありません。
しかしそれは本の面白さを教えてくれました。それ以降読書は私の趣味の一つになりました。
50代になって目が疲れて活字を見るのが苦痛になる前までは。
50冊の本を読み終え、十数年ぶりに安息の日々を送っていたある日。また大きな荷物が届きました。中には『小学館原色世界大百科事典』。
新たなプレッシャーを背負った日々の始まりでした。
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