犬の歯を抜く話|伊丹十三の短編エッセイ集は楽しかった
高校生の頃に読んだ、伊丹十三のエッセイ集『女たちよ』は記憶に残る一冊です。
他人を一切気にせず、自分の価値観と嗜好を全ての基準として、あらゆる物を自分の視点のみで考察する。
その揺るぎない自信には新鮮な感動を覚えました。そして多感な青年は大きな影響を受けました。いつか試してみようと。
その中で今でも印象に残っている話がいくつか有ります。
『犬の歯を抜く話』グツグツと煮込んだ大根を犬にガブリと噛ませる。すると、あまりの熱さで犬の歯が全て抜けて大根に食い込んだまま残る。…
『日本酒の正式な飲み方』お猪口は親指と指し指で対角線上を持つ。そして自分の口を隠すようにして、酒を口の中に放り込むように呑む。…
『男たる者いつ如何なる状況でも、取り敢えず、言い訳はしなければならない』「万が一女房に浮気の現場に踏み込まれた時でも、まだ言い訳のしようはある」..「今始めたところだ」と言うのだ。…
(恐らくですが)伊丹十三『女たちよ』より
昔から最後の話が特に気に入っていて、家で酒を飲みながら友人に話して盛り上がっていたのですが、
これが大きな過ちでした。妻が台所で聞いていたらしいのです。
このジョークは男にしか聞かせてはいけなかった。
それ以降、妻は私の話を疑うようになりました。
あの頃、こんな大人になりたかった。