まだまだ行けるぞ 70代

鮒寿司の恐怖

Sushi

生存本能を目覚めさせた鮒寿司

生まれて初めて、鮒寿司を食べました。友人宅に遊びに行った折に、たまたま遭遇したのです。

頂き物だそうで、「これは皇室御用達の鮒寿司だ。もう二度と食べる機会の無いであろう希少品だから、心して食べる様に」と言われ、

高級そうな桐の箱から出して、恭しく勧められました。

一目見て、正直、苦手そうな雰囲気でした。それでも好奇心に負け、「ほんの少しだけ」と、1センチ四方ほどの極小サイズに切ってもらい、

その、何とも言えない形状の物体を、恐る恐る口に入れたのです。

発酵と腐敗の境界線

.. が、舌の上に乗せた瞬間、明確な拒絶反応が起こりました。

強烈な臭気と異様な食感。それでも吐き出すわけにもいかず、すぐに飲み込もうとしたのですが、

今度は喉が完全に閉じてしまい、何としても飲み込めません。

わずかに残っていた「動物としての本能」が、これは食べてはいけない物だ、腐ったものだ、毒物だ、死ぬぞ.. と、必死に叫んでいるようでした。

数十秒ほど飲み込もうと苦闘しましたが、ついに諦めました。あれは、私にとって初めての「生命の危機としての食体験」でした。


腐敗と発酵は同じもので、人間にとって有用なものを発酵、有害なものを腐敗と呼んでいるだけだ.. そんな話を聞いたことがあります。

食べておいしければ発酵、まずければ腐敗。私にとって、あの物体は間違いなく「腐敗」でした。

おそらく死ぬまで忘れない、強烈な体験でした。


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