筋トレを辞めるきっかけも、再び始めるきっかけも、実は大した理由ではありません。
ただ、自分の中では「もう炭になって消えた」と思っていた情熱が、実は熾火(おきび)として、消えずに残っていただけなのだと思います。
目次
「カカシが履いたパンツ」の貧相さに気づいた日
過去、私は数年おきに思い立って筋トレを再開し、そのたびに7〜8ヶ月ほど続けては辞めてきました。
辞める時はいつも、自分を叱咤しすぎて疲れ果てた時でした。
「一度パターンが崩れたからもういいや」と投げ出したり、「男は見た目より中身だ」という都合のいい言い訳を探したり。
そんな時に、街を歩いていてヨロヨロと歩く男性を見ました。細くなった足で歩く姿は、まるでカカシが履いたズボンか、骸骨が履いたパンツのように、見ていて悲しくなる。
肋の浮いた胸や、だらしなく太った体は、人生を諦めた者の姿に見えてしまう。
私は、自分がそんな姿になるつもりはなかったのです。
きっかけは、007のタキシード
今回の再開の引き金は、映画『007』のワンシーンでした。パーティー会場に現れた、ジェームズ・ボンドと同じようにタキシードを見事に着こなした渋い老紳士。
その背筋の伸びた立ち姿を見て、私は直感しました。
「あれは、鍛えていなければ絶対に無理だ」
狭い納戸ジムで、重いダンベルを一人で持ち上げ続けるのは、肉体にも精神にも負荷をかけます。
しかし、負荷のない人間は簡単に衰える。自分の足で力強く踏み出す感覚を取り戻すことは、まだ人生を捨てていないことの証明なのです。
「常に備えておけ」という新しい目標
これまでの私は、目標を高く持ちすぎて自滅してきました。今の私が自分に課しているのは、もっとシンプルで根源的な言葉です。
「常に備えておけ(Always be ready)」
自分のやりたいことを、やりたい時にやるために。
あるいは、いつかタキシードを着るような日が来た時のために。精神力と体力を、いつでも使える状態でストックしておく。
そのためには、日常にわずかな「負荷」を混ぜ続けるしかありません。
熾火を絶やさぬよう、今日も私はバーベルを握ります。
みっともない親父にならないために。
そして、自分自身の人生を最後まで使い切るために。
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