庭にアナベルがあります。白い、大きな花の紫陽花のような花です。
細く長い茎の先端に、小さな花が集まった重厚な丸い塊を咲かせます。
満開のアナベル。この圧倒的なボリュームが、雨の日には難敵となります
この花は非常に倒れやすいのが悩みでした。梅雨時に咲くため、必ず激しい雨に当たります。
すると花はスポンジのようにズッシリと水を含み、その自重で無惨に折れ、泥まみれにお辞儀をしてしまうのです。今までは「そういうものだ」と諦めていました。
しかし、アーチ栽培用のU字型支柱を組んでいる時に、ふと閃いたのです。「これで全体を囲い、上部に碁盤の目のように支柱を渡して、茎を縫うように支えたらどうだろうか?」
思い立ったらすぐ行動です。農作業を一時中断し、U字型支柱を求めて100円ショップへ走りました。
目次
地中の「見えない敵」とのデスマッチ

頭の中に描いた設計図は完璧でした。しかし、現実はそう甘くありません。
庭土というやつは、地表の穏やかな顔とは裏腹に、地中には小石や木の根といった「見えない敵」を無数に潜ませているのです。
狙ったポイントに支柱を差し込もうとしても、ガツンと何かに当たる。数センチずらしても、また当たる。この微調整の繰り返しは、理想のフォームを求めて試行錯誤するトレーニングのセット間のようです。
この作業にハンマーは使えません。支柱を曲げないよう、じりじりと「腕力」でねじ込むしかない。使う筋肉は、前腕、上腕三頭筋、大胸筋、三角筋、腹筋。まさに地面に向かって放つ「逆ダンベルプレス」です。
特にU字型の支柱は、両端が地面に対して直角ではないため、力が外側に逃げてしまいます。逃げる力を体幹(コア)で封じ込め、真下へと伝える。
この攻防で、翌日は腹筋が見事に筋肉痛になりました。まさかアジサイの支柱立てで、腹筋の限界を味わうとは思いもしませんでした。
スクラムを組む支柱、そして勝利

一本一本がバラバラでは、アナベルの重みには勝てません。支柱同士を連結させ、一つの「構造体」へと進化させる必要があります。
一本でも浮いている支柱があれば、そこから全体のバランスが崩れていく。これはラグビーのスクラムと同じです。一人がサボれば、全員が崩れる。
逆に、全員ががっしりと地面に根差し、互いを補強し合えば、想像を絶する強度が生まれます。
この作業を通して、私は深い洞察を得ました。
「力(パワー)」だけではダメだ。「技(構造)」と「和(バランス)」が揃って初めて、自然の猛威に立ち向かえるのだ、と。
枯れてなお倒れないアナベルの秘密

結果、我が家のアナベルは、一本の脱落者を出すことなく、枯れるまで凛として直立し続けました。
近所の人には、大の大人がアジサイ相手に顔を真っ赤にして踏ん張っている姿は奇妙に映ったかもしれません。
しかし、シーズンを終えてもなお、軍隊のように整列して直立し続けるアナベルを見て、私は静かにガッツポーズをしました。
アグリッパのデッサンを描くように、完璧な骨格をアジサイの中に作り上げる。
これが私の「菜園×筋トレ」の流儀です。アナベルの倒伏に悩むすべての人に、この記事を捧げたいと思います。
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